オステオパシーとは
人間がどうして病気になるのか
どのようにしてそれを治癒に導くか
という、実用的な知識である。
A.T. スティル, M.D. の提唱するオステオパシーとは、単にテクニックを指すものではありません。 基礎医学からさらにもう一歩踏み込み調査、発展を遂げている「オステオパシーの哲学と理論」。その理論を実践するためのツール「検査」と「テクニック」。これらを総じた健康管理の体系を「オステオパシー徒手医療(OMM)」と言い、我が国でオステオパシーと呼ばれているものはこれにあたります。
アトラス・オステオパシー学院ではオステオパシーをご理解いただくため、このオステオパシーの体系を概念図として学校案内やwebページにご紹介しております。教科もまたその体系に準じ、理論・検査・テクニックそして基礎医学に分類し、講義を提供しまいりました。
オステオパシー専門科目
【理論】オステオパシーの哲学と理論
これを知るもののみがオステオパシーを実践できる。オステオパシーの根幹をなす講義。なぜオステオパシーは全身を1つのユニットとしてとらえているのか?基礎医学、とくに解剖学を基に、体の1つの構造物の問題がどのように全身に影響するのかを知り、身体における問題を解決に導くための思考パターンを養う「哲学」。そして実践のための「理論」を学びます。
別格に扱われがちの「頭蓋領域のオステオパシー」にも触れていきます。頭蓋も体の一部であり、本来他部位と並列に論じていくべきであると本学院では考えております。
ACO講義では、森田学長が実際にアメリカで学んだ本場のオステオパシーを、本だけでは語りきれない機微も盛り込んで論じておりました。
【検査】触診・軟部組織
手技のための触診。体の表面からその深層に対しアプローチしていきます。そのため体の外から筋肉・骨・関節・内臓・血管・神経などの内部構造を理解しなくてはいけません。実際の臨床では、①手技の対象となる筋肉や骨を的確に触る触診。②大まかに体に触れた時の触感の違和感から、それを感じさせる構造物が何であるのかを推し量る触診。この双方の考え方が必要です。人体の構造物は幾層にも重なっています。解剖学の知識と触診で得た情報を融合し、皮膚の上から人体の構造物の配置、形状、固さ、質などの詳細を把握すること。骨が皮膚近くにあり触りやすい部分(ランドマーク)から一定の手順を踏み触診の精度を上げていくこと。目的に応じた触診を可能にするために反復練習を行います。筋肉の問題の有無による触感の差を覚えるために、実際に改善させるテクニックも学んでいきます。オステオパシーの検査・テクニックのすべての基本となる講義です。
【検査】共通検査
体を全体的に検査する。症状を出している所にとらわれることなく、問題点を見つけ出す一連の検査方法です。これはACO 独自で考案されたものです。
ACOではこの講義を通して、施術者としての体の使い方や、触診力、分析力を養い、実践的な施術に結びつけるよう指導してまいりました。一日に何人もの操作を行う施術者にとって負担のかかる姿勢は自身の体を痛めてしまう結果につながります。一連の操作を繰り返し練習することで、いつも力みのない良い姿勢、安定した動作でクライアントの体を動かせる習慣を見につけます。触診・軟部組織と同様、オステオパシーの検査・テクニックのすべてに通じる大切な講義でした。
【検査】OMT検査
オステオパシー共通検査で大まかに探した問題部位をさらに局所まで絞り込み、具体的にどのような問題であるかを特定する徒手検査を学びます。オステオパ シーでは「体性機能障害(以下SD)」と呼ばれるこの具体的な問題に応じて各々のテクニックを選出するため、徒手検査の正確性が必須です。関節の動き、滑り、遊び、筋肉の伸張性などの問題の有無を、主に関節の可動検査を通じて今ある状態を詳細に把握する練習を行います。検査とはその後の全てのテクニックの指針となるものです。
【検査】臨床検査
オステオパシー施術のクライアントの中には医者に行くほどの症状ではないとご自身で判断し受診される方もおられます。しかし実際には医師の診断が必要な症状であるケースも多いのです。我が国では「診断」や「治療」は医師のみに権限のある行為です。より安全な施術のため、本学院では施術前のヒアリングや整形外科テストなどを、通院を促す、または施術の禁忌を学ぶためのツールとして習得していただきます。(旧講義名:鑑別診断)
【テク】ダイレクト・テクニック
OMT 検査によって見つけられた、体性機能障害(SD)の部分に存在する関節の滑りや遊びの減少を「制限」と言い、その可動域の限界で一般に「固い」「引っかかる」と表現される関節の位置を「制限障壁(制限バリア)」と言います。ダイレクト・テクニックとはこの制限障壁がある方向に関節を動かし、制限障壁を直接押し広げることで、可動域を改善していくテクニック群を指します。
【テク】筋エネルギー・テクニック
クライアント自身の筋力を用いて関節や筋の機能を改善するテクニックです。筋力と言っても用いる力が小さいため、体への負担が少なく適用の幅が広い事が特徴です。どのテクニックにも当てはまりますが、体の指標となる部分を理解しながら、立体的に体をとらえられる事を目指していきます。関節や筋の柔軟性だけでなく、筋力の改善も見込めるため、リハビリテーションにも有効とされています。
【テク】ストレイン&カウンターストレイン
軽度の押圧で痛みが出るポイント「圧痛点」を指標とするテクニックです。検査で見つけた圧痛点に対し、押しても痛みが出なくなる楽な体勢をとり、筋肉を過緊張させている神経の異常な信号を抑え、その緊張をとります。クライアントに殆ど負荷をかけずに高い効果を得られるので、高齢者など体の弱い方へ適しています。
【テク】内臓オステオパシー
内臓に対する治療は、古くは創始者のA.T. スティル M.D. の時代から行なわれていました。フランスのJ.P. バラル D.O.(F) らによってさらに研究がすすめられ、1980 年代になり再び注目されるようになったテクニックです。腹部や胸部に収められている内臓は、それぞれが一定のリズムで極わずかな運動をしています。狭い空間の中で互いが自由かつ安定した動きを有するため、体に大きく影響を及ぼします。本講義では、内臓と筋骨格系との結びつきを解剖学的見地から学び、臓器同士の関連する動きと臓器自体の持つリズムを改善させる方法を学びます。
【テク】頭蓋オステオパシー
頭蓋骨は23 個の骨からなり、同期した一定のリズムでわずかに動いているというのがオステオパシーの見解です。この動きについては諸説ありますが、米頭蓋アカデミーの主張する脳など神経組織の周期的な運動に連動して起こっているという説が一般的です。頭蓋骨の可動性もまた他の部分同様、全身との相互関係から切り離せないため、「オステオパシーの哲学と理論(OTM)」講義においても施術に不可欠な内容について解説・実技練習を行っております。
本オプション講義はOTM の内容を踏まえ、複雑な形状である頭蓋骨の解剖学を詳細に解説し、テクニックのステップアップを目的としています。オステオパシー医師・医師・歯科医師のみに入会を許されている米頭蓋アカデミー正会員、森田学長監修のもと、ベーシック、アドバンスと段階を踏んで確実に学ぶことが出来ます。
基礎医学科目
解剖学
人体の各部分の平均的な構造について論じる学問です。
「1に解剖、2に解剖、3に解剖」と言われるほど、オステオパシーの基本はこの解剖学から成り立っています。
人体の構成物の形状や隣接部位との関係を詳細に把握することや、その形状に伴った動き、さらに伝達の熟知はオステオパシーの実践において必須です。オステオパシーの理論やテクニックは解剖学を頭に描きながら行うものだからです。また、人体の異変に気がつくためには、それぞれの性差や年齢差においても変化する「正常」を知る必要があります。解剖学を基本としたオステオパシー独自の見方を養うために、すでに医療資格をお持ちの方も必要性を感じ受講されることの多い教科です。
生理学
生体の機能およびメカニズムを学ぶ学問です。
まず正常な人体、形態、機能を理解し、解剖学といった構造との結びつき、または病理学との対比を行います。生理学はホルモンなどの内分泌を理解する内分泌生理学、細胞内の現象を扱う細胞生理学、神経系を学ぶ神経生理学に大別されています。
体を構成する細胞の構造や働き、代謝といった1つの単位から呼吸器系、消化器系といった体の各器官とそのつながりに至るまでフォーカスを広げて解説をすることで、施術で得られる体への影響や「体全体を1つのユニットとして見る。」という視点を養います。
病理学
生理学とは対照的に、正常とは異なった病的状態の本質について研究をする学問です。本学院では病理学を総論と各論とに講義を分割し、総論では全身に共通する病気の原因とそれに対する生体の反応など、ごく一般的な原理について解説を行います。
総論は各論の基礎となり病気は総論の中でどこにカテゴライズされるかによって各論として分類されます。各論は一定の目的に応じた体の働きを行う各臓器(器官)に関する病態を学びます。各論での知識は臨床に活かせる内容を中心に構成され、特に日本人に多い病態例をあげ解説していきます。