オステオパシーのはじまり

1913年 Dr.スティルと同僚

1913年 Dr.スティルと同僚

Dr.スティルは、3人の子供を髄膜炎で亡くし、医師でありながら子供達を救えなかった事から当時の医療※1に疑問を感じました。

『人は自然治癒力を持っており、病気になるという事は自然治癒力を妨げる理由が身体にある。』という観点から解剖学、生理学、病理学などの医学知識、そして人間に対する様々な情報をもとに研究した結果、

  • 身体の構造※2が崩れ、働きがうまくいかないと血液やリンパ液などの循環が悪くなり病気になる。
  • 構造を改善すれば、血液やリンパ液などの循環が回復して自然治癒力が高まり病気が治る。
  • 形(構造)と働き(機能)には密接な関係がある。
  • 身体を部分的にみる事より、全体を考えなくてはいけない。

という事を発見しました。そして、さらなる研究をすすめ1874年にオステオパシーを発表しました。

※1 当時の医療は砒素・水銀などの薬剤治療が主流で現在の医療とはかなり違いがあります。
※2 身体の構造とは、骨や関節だけでなく、筋肉、靭帯、内臓、神経、血管など体を作っているもの全てを指します。

オステオパシー最初の学校

アメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(ASO)

アメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(ASO)

オステオパシーを発表してから、Dr.スティルは各地を転々としながらオステオパシーの治療を行い、その治療効果の高さから次第に人々から認められるようになりました。やがて、ミズーリ州のカークスビルに定住し治療するようになると、Dr,スティルの治療を受ける為に全米から人々が集まり、カークスビルに来るための鉄道がひかれ、患者用の宿泊施設としてホテルが建設されるほどでした。

そして、ついに1892年最初のオステオパシー大学であるアメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(以下ASO:現カークスビル・オステオパシー医科大=KCOM)が設立されました。Dr.スティルは自分のテクニックを教える事よりオステオパシーの哲学と理論を伝える事に重点をおき、その結果、現在のバラエティーに富んだOMT※へと広がりました。これからもオステオパシーの哲学と理論を持ったオステオパスが、『人間の健康』について深く掘り下げていくでしょう。10人程で始まったカークスビルの小さな学校も、現在ではアメリカに分校を含め28校の医科大学が存在し、これからさらに増えていく計画になっています。アメリカ以外でもイギリス、カナダなどの欧米でオステオパシー大学が設立されるほどに発展しています。

※OMT=オステオパシック・マニピュレーティブ・トリートメント(Osteopathic Manipulative Treatmentの略)

オステオパシーがアメリカで医師として認可

T.クロウD.O. 勤務するオーランドのフロリダ病院は、医師総数の約半数がD.O.(2008年現在)

T.クロウD.O.
勤務するオーランドのフロリダ病院は、医師総数の約半数がD.O.(2008年現在)

オステオパシーの医療としての効果の高さから、1896年アメリカ・バーモント州においてオステオパシーが初めて医療業務として認可され、1973年には全米50州でオステオパシーが医学として公認されました。これにより、アメリカではオステオパシー・ドクターはD.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)と呼ばれ、いわゆる医師(M.D.)と同等の地位を得て、投薬や手術などの医療業務を行う事が可能になりました。

※D.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)を正式に使用できるのはアメリカ・オステオパシー医科大を卒業した者のみで、例え他国のオステオパシー大学を卒業してもD.O.は使用できません。本学院学長である森田博也D.O.は、アメリカ・カークスビル・オステオパシー医科大学の卒業生です。

世界へのオステオパシーの普及

Dr.スティルの教え子であり、ASOの生理学教授をしていたDr.ジョン・M・リトルジョンによって、オステオパシーは1903年にイギリスに伝えられました。

彼は1917年にイギリスで最初のオステオパシー学校であるBSO(ブリティッシュ・スクール・オブ・オステオパシー)を設立し、現在では8校の大学がイギリスに存在しています。イギリスへの伝来以降、オステオパシーは欧州を中心に広がっていき、現在ではオステオパスが医療資格者としての地位を獲得している国も存在しています。

※日本ではオステオパシーは医療資格としてまだ認められていません。

各国のオステオパシー大学

国名 アメリカ
usa
イギリス
GBR
オーストラリア
AUS
カナダ
CAN
ロシア
RUS
スペイン
ESP
日本
JPN
認可大学 29校 10校 4校 3校 1校 1校 0校

2010年2月現在

現在のオステオパシー世界情勢

21世紀を迎えた現在、各国ごとに分かれていたオステオパシー関係団体を、世界的規模でまとめようとWOHO(世界オステオパシー保健機構)、AOA(アメリカ・オステオパシー協会)が協力し、世界中どこでも同じ必要基準を満たしたオステオパスによる治療が受けられるための教育水準を設けました。このオステオパシーのガイドラインはWHO(世界保健機構)で採択され、近い将来オステオパシーが 医療として全世界で認知される可能性が出てきました。

日本の現状

ACO校章

ACO校章

現在の日本には国に認められたオステオパシー教育機関が存在せず、明確な教育基準がない為に授業内容、修業年数などが一貫していないというのが現状です。日本のオステオパシー教育はWOHOの提唱する教育水準にはほど遠く、認可されている国々と比べるとオステオパシー教育後進国となっています。本校はオステオパシーを取り巻く国際情勢の変化を見据え、日本のオステオパシー教育の基本的存在となるよう知識と技術、そして人間性の育成に力を注ぎたいと願っています。

今なぜオステオパシーなのか ~オーダーメイドな健康~

近年、日本における高齢化社会の問題がマスコミに取り上げられています。
高齢者が増えることによる国家の医療費の高騰は、今や避けられない現実となって我々に問題を投げかけています。
私たちは自己の健康管理をどう考えればよいのでしょう。
病気になってから医者にかかれば良いのでしょうか。病気になる前の段階で、病気の芽を摘み取ることは不可能なのでしょうか。
日本におけるオステオパシーは手技療法です。人の手を使って関節や筋肉などに「働きかけ」を行います。やがてその「働きかけ」は低下していた身体の機能やバランスを本来の状態に近づけていきます。
身体の機能と健康には相関性があります。
年齢、性別、環境などにより健康という定義は変化をします。
自らの意志で健康管理をはかる。これこそが今後の社会における私たちの貢献の一つといえるでしょう。

高い医学知識と確かな技術を持つことで、幅広い分野での活躍が期待されます
オステオパシーは欧米では医療として認可されており、日本でもプライマリーケア(予防医学)に貢献し国民の健康に寄与するでしょう。またオステオパスの持つ医学知識と確かな技術は、独立開業の他に医療分野・スポーツ分野・福祉分野などからのニーズが高まってきています。

※当サイトで使用されているA.T.Still,MDの写真は、Kirksville College of Osteopathic Medicineならびに、Still National Osteopathic Museumより掲載許可を得ています。
※このページではアメリカのオステオパシーを説明していますので「患者」「治療」という表記をしています。